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コラム
中国原子力潜水艦の日本領海侵犯について
 

11月10日に中国の原子力潜水艦が我が国の領海を侵犯するという事件が起こった。
原潜は午前5時48分に日本領海に入った。日本政府は北朝鮮不審船事件に次いで2度目の海上警備行動を発令し、徹底的に原潜を追尾し、断固たる対応を示したことは評価される。
 
しかしながら、残念であったのは海上警備行動が発令されたのが、実際には原潜が領海から出た後であったことである。「中国海軍の漢級攻撃型原子力潜水艦が10月初めから太平洋で長期訓練を行っている」との情報が早い段階から入っており、海上自衛隊は沖縄近海に入ってきた原潜を探知し、領海侵犯前日の9日にはスクリュー音から原潜の艦名まで特定していたという。にもかかわらず、海上警備行動の発令が遅れてしまったことは大変残念で、今後の対応に改善を要求したい。
 
中国は11月16日午前、中国外交部武大偉副部長から阿南大使に対し、「中国側として調査をした結果、当該潜水艦が中国原子力潜水艦であることを確認したが、通常の訓練の過程で技術的原因から日本の石垣水道に誤って入ったものであり、この事件の発生を中国側として遺憾に思う」とのコメントがあった。
 
中国が領海侵犯を認めたことに実は少し驚いたが、しかしながらこのコメントをそのまま受け入れるものでもない。まず、「技術的原因から…誤って入った」としているが、原潜を追尾した海上自衛隊、第2護衛隊の井上力司令は「水深100メートル前後の浅い海を、時速約20キロの速い速度で針路を変えながら航行していた。この海域を熟知していた」と原潜の印象を語っており、とても故障や誤りで領海侵犯したとは考えられない状況であった。アクティブソナーを投下したことで、相手にも相当な衝撃・精神的なダメージから潜水艦内は大混乱していたのではないかとの見方もあるが、もともと領海侵犯自体は意図的な行動と考えるのが妥当であり、明らかに中国のプレゼンスを示すための行動であった。石垣島や宮古島の方々にとっては目の前を原子力潜水艦が潜航したまま通り抜けていったわけで、大変緊張した状況であったわけである。
 
外国の船舶が領海を航行する際は国旗を掲げて洋上を航行することになっている。我が国の潜水艦への対応は「海面に浮上して国旗を掲げるか、速やかに領海外に退去させる」ことで、此れに従わなくとも攻撃を加えることは認められていない。かつてスウェーデンの領海をソ連の潜水艦が侵犯した際、スウェーデンは爆雷を投下し続け潜水艦を浮上させたということもある。我が国はたとえ今回領海侵犯中に海上警備行動を発動できたとしても、相手から攻撃を受けない限り武力攻撃は出来なかった。武力攻撃されないとわかっていれば原潜だって浮上してこないし、すぐに退去する必要も感じないであろう。
 
11月21日、サンチアゴでのAPEC会議の際行われた日中首脳会談において、小泉首相は中国原子力潜水艦による領海侵犯事件を取り上げ、「今後は再発防止が特に重要だ」と強調。また「ガス田開発で東シナ海を対立の海にしないことが重要」と述べたが、中国の胡錦濤国家主席はこれらに直接答えなかったと言う。中国側のいう「遺憾の意」は「誠意ある謝罪」ではなかったのではないか。
 
今、東シナ海は海洋権益を巡って、日中台が非常に厳しいやり取りを行っている最中である。日中中間線付近には豊富な海洋地下資源があり、中国は天然ガス開発に躍起となっている。また、中間線を越えて日本側の排他的経済水域にまで調査活動を広げてきている。中国は尖閣諸島を中国固有の領土と主張しており、このたびの原潜活動もこういった主張に対する既成事実作りの一環であり、決して許されることではない。中国には厳重に抗議してゆくべきである。
 
自衛隊には大変な使命感を持って我が国の最先端で防衛任務にあたっていただいているが、わが国益を守るためにもなお一層支援体制を拡充していかなければならない。


以上
 
 
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